お子様のピアノ

電子ピアノじゃ上手にならない?ホンモノのピアノじゃなきゃピアノは楽しめない?と購入を迷う方へ

ピアノを習い始める時に、ピアノをまだ持っていない場合は練習のためのピアノを購入を検討して頂く事がほとんどだと思います。

なんとなくはご存知かと思いますが、電子ピアノとアコースティックのピアノの違いや、どっちのほうがいいの?と気になりますよね。

少し知ってる方はピアノといえばアップライトピアノ!電子ピアノなんてと思っている方もいらっしゃるかもしれません。

もちろん、基本的にはピアノはアップライトかグランドピアノがやはりピアノという楽器の本来の音の美しさを直接感じられるものですが、電子ピアノがダメかと聞かれると結論がイエスかノーかとひとつに纏まらない難しいテーマだと思います。

なぜ、結論が纏まらないのかというと、ピアノ演奏に求めるものが人それぞれ違うからです。

ピアノを絵で例えたら分かりやすいかもしれません。

ゴッホやダヴィンチやモネに代表される世界的な名画って魅力的ですよね。色使いや躍動感、風の音や匂いまで感じられそうなくらい、何年も何年も前に作者が描いた風景がすぐそばにあるような気持ちになります。

グランドピアノやアップライトピアノの良さは、そういう生の臨場感が伝わるところに通じます。バッハやベートーヴェンやショパンのような世界の名作家がどんな世界を生きて何を感じたか、時代を超えて弾き手が感じそして考え、当時と同じ楽器で演奏し再現することが魅力です。

では、絵は絵でもCGやプロジェクトマッピングなどのグラフィックアートもリアルな世界の描写や夢のある世界観など人の心を惹きつける技術がとても魅力ですよね。また人気のインスタグラマーさんのような漫画やイラストが描けるアプリやソフトがたくさん開発されていて、誰でも気軽にプロのような作品作りにチャレンジ出来る事が凄いなぁと思います。

電子ピアノもすごいんです。音質の良さや再現性は一昔前よりかなり上がっていますし、なんせ多機能なのでインターネットと接続しデータ購入した楽譜を液晶画面に表示させて演奏できたり、伴奏を流して1人で連弾やアンサンブルやカラオケを気軽に楽しんだりもできます。パソコンと接続し作曲や音楽制作が出来る機能もあり誰でも気軽に配信することが出来るなどグランドピアノやアップライトピアノでは出来ないことが沢山あります。

このようにピアノに何を求めるかで訴求内容も変わってくるのです。

ほとんど言いたいことを前置きで言ってしまいましたが💦改めてアコースティックのピアノと電子ピアノの構造の違いなどを書いていきますのでよかったら見てみてください。

アコースティックピアノと電子ピアノの構造の違い

グランドピアノやアップライトピアノといったアコースティックのピアノは鍵盤がハンマーを叩き、ハンマーが弦を鳴らす構造です。また一音につき1本~3本の弦で音を響かせ、打鍵による振動が響版を伝わって広がっていきます。そしてその音を鳴らすために組み込まれる部品の数はなんと5000個以上にもなり、その複雑な構造を伝わって発音することが豊かな表現力を持ち、音色の美しさや深さ、また人それぞれの演奏技術に繊細に応える事が出来るんです。

電子ピアノはそのアコースティックのピアノの音を録音した音声が鍵盤を打鍵すると出るように作られていて、タッチや音の出し方など最新技術により、アコースティックの表現力を再現する様々な工夫が凝らされています。非常に高いレベルの再現力をもつ電子ピアノもありますが、弦の振動が響版を伝わるという構造を省いている以上は決してアコースティック同等の表現力になることはないと思っています。そのため、演奏者によって音色の違いは出にくい=だれが弾いても同じような音色になりやすくなるといったデメリットに繋がります。

私個人的な感覚ですとピアノは鍵盤を打鍵するときに作られる音色も大切ですが、鍵盤が指から離れるその離れ方も暗色を作る大切な要素です。

どの電子ピアノも打鍵(押す)はアコースティックのピアノとまるで変わらないような感覚でも、離れる時の感覚がちょっと電子ピアノ独特の感覚を持ってしまい、アコースティックピアノと全く遜色ない!とは感じられないところです。あくまで私個人の感想です。

求めるものの違い

ピアノに求めることは人それぞれです。ピアノそれぞれに出来ることも違います。

ホールにあるコンサート用のグランドピアノは、ホールにあるからそのスペックを活かせるように生まれてきたピアノです。ピアノとホールが一体になって共鳴し合っているため、これが家庭に置かれてもその表現力を活かしきることができません。

家庭用のグランドピアノは家庭で演奏されることを前提に作られたもので、小さいサイズのものから大きいサイズものがあり、大きければそれだけ豊かな表現力を持ちます。大きな入れ物でより長い弦を鳴らした方がより音量、臨場感、深みなどが増します。教室で合唱の練習をするより体育館で歌う方が声が響きますよね。それとおんなじです。

アップライトピアノは、グランドピアノをもっと家庭用にコンパクトに作られています。どちらのピアノも当然、鍵盤を「押す」事は同じですが、 構造上の最大の違いとして、 ハンマーが弦を叩く構造がグランドピアノでは「下から上」ですが、アップライトピアノでは「手前から奥」なので、指から伝わる力の差がそこに生じるので、表現力に差が出てしまいます。構造が違うので音の響き方やペダルの表現力など他にも違いは沢山あります。気になった方は調べてみてくださいね。

すごいですよね、アコースティックのピアノでもこれだけの違いがあるんです。

「どのピアノがどんなシチュエーションのときに必要か」伝わりましたでしょうか。

ホールで演奏する事が目的のプロのピアニストなら、当然その練習環境はホールのピアノに近い事が理想的ですよね。また、プロを目指す学生も近しい環境でなければ難しい事はお分かり頂けると思います。

では、趣味で楽しんだり、そこまで細かな表現力を求めないまでもピアノの演奏を楽しむ事ができるのでは?気軽にピアノにチャレンジする事もできるのでは?というニーズに合わせて作られたのが電子ピアノです。

電子ピアノだって楽しめます。でも、できる事の限界もあります。

電子ピアノについての悩みや迷いの相談をネットで見かけたり、実際に生徒さんのご家族から相談を受けたりもするのですが、その多くが「電子ピアノってやっぱり上手くならない?アップライトピアノに比べてダメなもの?」というニュアンスの相談な事が多いです。

ダメじゃないですし上手くならないとはもちろん思っていませんが、アコースティックのピアノとは全く違うモノであることは間違いないです。

じゃあなぜ電子ピアノの進化がここまで進んでいるか。理由があります。

電子ピアノが作られてる主な理由としては、ピアノ演奏の楽しみ方や新しい価値を高めてより多くの人に手に取ってもらいたいというピアノ演奏の普及の観点=楽器メーカーの戦略がまず一点です。

ではなぜアップライトのピアノではなく電子ピアノの進化が目覚ましいかというと、

経済成長期にピアノは豊かさの象徴とされ一気に家庭に広まりましたが、バブルが崩壊するとそれまでのアップライトピアノの生産台数と電子ピアノの生産台数が逆転してしまったんですね。そのため各メーカーの電子ピアノの販売競争が今日まで激しくなったと言います。

また、人口が都市部へ集中したため住環境がマンションや人口密集地帯に変わった事などが、コンパクトで騒音問題もクリアできる電子ピアノを求める人が増えた大きな要因となっています。

実際にレッスンの現場では「地方の実家にピアノはあるけど、今はマンションだから持ってくることができない」と生徒さんのお母様より聞くことがとても多く、さきほど挙げた時代背景とも合致します。

またアップライトの良さを知って育ってきたお母様にとって、「仕方ないから電子ピアノにしよう」とお子さんにアップライトで練習させてあげられないジレンマなどが「電子ピアノ=やっぱりダメなのかな」に繋がるんだと思います。

大きくそれましたが、電子ピアノの楽しみ方に話を戻します。

一昔まえはピアノといえばアップライトピアノでしたが、時代が変わり住環境が変わり価値観も多様化し、ピアノを演奏する目的も目標も人それぞれ違うのに「ピアノといえばアコースティックでしょ」とひと口に言われる事に違和感を感じるのは当たり前です。

なので、大切なのはピアノを習う事で何を求めるかだと思います。

プロ並みに演奏できるようになりたいか、プロまでいかなくてもピアノ本来の良さや味わいを感じられる演奏がしたいか、音符が読めて曲が弾ける事自体に達成感や努力する意味を持たせるか。

電子ピアノで手軽に演奏を楽しんで、アンサンブルや音楽制作など電子ピアノならではの機能を使ってフルで楽しむか。

ピアノを演する奏事で描かれるストーリーは人それぞれで全く問題ないと思います。そのストーリーによって練習環境も選んで頂いて、描いた通りに楽しめて満足感があれば結果オーライなんじゃないかなと思います。

だけどアコースティックピアノをすすめるワケ

電子ピアノでいいの!ならいいじゃん。「電子ピアノで習いたいんですけど」と音楽教室にいったら、まずアップライトピアノの営業を受けた。という事もよく聞く話です。

これも理由が色々あるのですが、私が出来ればアップライトピアノ以上を求める理由がこうです。

・ピアノ本来の豊かな音色を聴いて豊かな感性を育ててほしいのと、より良い教育水準を講師として求めていく事は忘れてはいけない理想ですし、同じお月謝ならどんどん高見を目指した方がサービス(商品)としての質も上げられるからです。

・また「続くか分からないものにお金をかけたくない」=「安かったしいつ辞めてもいい」といった気持ちを潜在的に持ってしまう可能性があるなら、「アップライトピアノを買ったからには頑張って続けさせねば」とご家庭の協力体制が強くなり、本人のやる気や演奏力・継続率の向上に繋がる事が多いからです。

実際に電子ピアノ購入者とのアップライトピアノ購入者の5年後10年後の継続率の差は大きいです。ちゃんとしたデータがないので完全に私の肌感ですが、ソナチネ・ソナタレベルまで継続できる確率はアップライトピアノ所有者の方が段違いに多いです。

・「うちは趣味程度にピアノが弾ければいい」と始められた場合でも、やってみたら結構センスがあるじゃない!頑張ってピアノ科も目指せるかなと数年後に希望が変わることや、吹奏楽部で始めた楽器が上手で管楽器科などで音大受験する場合もピアノは必須なので、途中でピアノに求めるレベルが変わっていくことはあります。その時に電子ピアノだからと諦めなきゃいけなくなったら、それはとても残念だからです。

まとめ

と、メリットデメリットどちらもある電子ピアノですが、「電子ピアノじゃ物足りないな」と感じたり、「本人がもう少し本格的に演奏したい」と言えばアップライトピアノに買い替えるのもいいな~と思っておられるご家庭もおありかと思います。

次回はアップライト購入か電子ピアノ購入かで迷っている方への記事を書いていこうと思ってますので、そちらも参考になさってください。

といっても今の環境じゃきっと無理!と電子ピアノの選択肢しかないと思っておられる方も、突破口はあるかもしれないので、一応チラっとのぞいてみて下さいね。

電子ピアノVSアップライトピアノ~迷った時に考えたいポイント~

最後に一点。

電子ピアノを購入予定の方へ・・・ネットショップのレビューは基本的に「電子ピアノOK派」のレビューが当然多くなります。それで納得して頂いてももちろんいいのですが、「よくないレビュー」も必ずご確認ください。ピアノのスペックに関してのレビュー以外にも大切な情報が見られると思います。

例えばお店の対応(補償内容)や、他店と比較して特に安いときは、よくよく見たら型番がひとつ前のものだった、付属品が違うなどそれなりの理由が必ずあります。

楽器店で購入すると購入時はもちろん、アフターフォローもしっかりしてます。お店によってはメーカーに偏った営業を受ける可能性もなくはないですが、お客様の希望をしっかりと聞いてくださるはずです。

また家電量販店の電子ピアノコーナーの店員さんは音楽の知識はあまりないと思って下さい。ネットでの購入と同じく保証やアフターフォローの事などもしっかり確認してくださいね。

また次の記事でもそのあたりも書いていこうかと思いますので、今日はこの辺で失礼します~。